文学作品の映画化が相次ぐ今、近代文学における“内向の世代”を代表する作家・小川国夫の作品をオムニバス映像化。
創作の場として郷里・藤枝(静岡県)を選び、生涯そこを離れることなく独航の立場を取り、自作のテーマとスタイルを追求し続けた孤高の文士、小川国夫。
その文体は、誇張でも主張でもなくただそこに在るもの・在る感覚を、感情や形容を極限まで抑制した言葉のみで簡潔に構成され、時に難解であるが、
同時に読む者を深淵なる言葉の世界へと邂逅させる。
またそこに描かれる物語は、戦中・戦後から現代への時代を背景としながら、
自らの信仰とする聖書をモチーフにしたもの、大井川流域のフィクション、私小説的なものを多くの題材としている。
その作品世界に共鳴する三人の映像作家が“短編映画”というアプローチで小川文学作品に迫り、オムニバス映画「デルタ」として新風を吹き込む。
タイトルの「デルタ」には、三人の映像作家によって切り取られた三種の映像、三本の小さな支流が集まり大海へと続く河口に出来た三角州(=デルタ)を意味し、
また小川国夫が愛し、数多くの小説の舞台ともなった静岡・大井川の河口の”三角州”へと通じていきたいという思いが込められている。
インターネットや携帯電話などのコミュニケーションや情報が恒常化する現在。
孤独と対峙し内なる声から真実を追い求めた小川国夫の諸作品を出発点とした本作は、“個”を取り戻し“今”に立ち返るためのツールとなり得るのではないか。
各作品には、演出家・美術家の飴屋法水はじめ、今、各ジャンルで注目を集めているアーティストが多数集結。
撮影は、小川国夫が生き、歩き、描いた土地、藤枝で行なわれた。
そうした場に生身の肉体を手にした登場人物たちが、スクリーン世界に浮かび上がる・・・
2010年/75分/HD
プロデュース 仲田恭子
宣伝美術 青木祐輔
製作 映画「デルタ 小川国夫原作オムニバス」上映委員会
お問合せ delta.movie2010@gmail.com