『マグレブ、誘惑として』から(2)

小川国夫は、旅に生きた作家でもありました。
『マグレブ、誘惑として』の作家は、
“言葉”を探すため、北アフリカ・マグレブを旅します。
旅に明け暮れた若き日を思い出したとき、マグレブ諸国は
作家にとってもっとも魅惑の多い場所だったようです。
心臓に病を抱える彼にとって、命がけの旅だったというふうにも書いてあります。
その旅で、彼はマグレブに住み着いたある日本人と出会います。
彼は一度、自殺をしようと決意してその地へ来ますが、
砂漠に降り注ぐ星空に惹きこまれて、「捉え」「ゆさぶられ」
「自然と呼応する」ように生かされたと作家に話します。
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静岡新聞社制作によるDVD『故郷を見よ 小川国夫の文学世界
の映像のなかで小川さんは、「自然のなかに展開する人間のドラマというものに
たいへん興味があって、…文学は風土を書くというものというふうに
見直されてくるんじゃないかという気がします。なぜかっていうと、
人間っていうのは大自然のなかに生きている生き物なんです」と語っています。
人の考えられる力を超越した自然の力を、見つめつづけていました。
※本日11/21(日)、渋谷アップリンクXで上映中の
 金子雅和短編映画集『辺境幻想
 にて「誘惑として、」短篇バージョンがゲスト上映されます。
 ぜひご注目ください!

下窪俊哉