12月25日は映画上映後に、俳優の広田ゆうみさんに、朗読を行って頂きました。
朗読の題目は、小川国夫の処女作『アポロンの島』に収録された「海と鰻」・「夕日と草」・「遊歩道」という作品です。
三篇とも僅か数頁で切り取られた、小説ともスケッチとも言い難い作品。しかも三作品ともに描かれている風景や文体が異なり、連続して朗読するのはかなりの難易度を要したはず。
その難役を仰せつかったのが、本映画製作者の仲田恭子が「日本で三本の指に入る尊敬する俳優」という広田ゆうみさん。広田ゆうみさんは俳優として様々な場で活躍されていますが、「朗読」も積極的に取り組んでおられます。そのスタンスは明確。
「書かれた言葉を<自分>という管を通して発する」
広田さんの朗読は、言葉に余分な色を塗らない。喩えるなら、薄墨で描かれた水墨画に近い、そんな印象を受けました。だからこそ、ことばのとめはねに対する感覚が鋭く、リズミカルでありながらも叙景的に響きました。
広田さんは作品ごとに姿勢を変え、声の響かせ方を調整されていました。なかでも印象深かったのは、真ん中に挟み込まれた「夕日と草」。この作品を読むとき広田さんはすくっと立ち上がり、映画館のなかに、やわらかな薄明を灯すような朗読を行って下さいました。映画館の天井に吊るされた金属のオブジェが、ふと共鳴したような瞬間がそこにはありました。
広田ゆうみさんは、2011年1月21日(金)22日(土)23日(日)に、別役実さんの作品「眠っちゃいけない子守歌」を演出し、そして自ら出演されます。
※詳しくは下記をご覧下さい。
http://konoshitayami.sensyuuraku.com/linksouko/betsuyaku.html
井川 拓