12月21日(火)大阪シネ・ヌーヴォでの上映初日、『小川国夫生誕祭』の特別ゲスト司修さんの作品を少し紹介します。
本日紹介するのは、司修さんの画文集『風船乗りの夢』という本です。装幀家・画家としてだけでなく、文章という領域でも、司修さんの才覚が注目を集めた一冊といえるでしょう。
『風船乗りの夢』というタイトルは司さんと同郷の詩人萩原朔太郎の詩からとられています。メルヘンチックな響きの言葉ですが、ここに収められた絵、文章はある痛ましさを覚えずにはいられないものばかりです。そう、朔太郎の詩と同じように。
先日、司修さんのことを「旅人」と紹介しました。ひとはなぜ旅に出るのでしょうか。なぜ旅に病み、夢は枯野をかけぬけるのでしょうか。
その理由の一つは、「故郷を喪う」痛みに発するのかもしれません。
この本のあとがきには、小川国夫がこんな文章を寄せています。
「私は反射的に、彼の風景を思い浮かべる。青く果て知れない夢の地帯を思い浮かべる。私にはまだよく見極められないが、君は故郷へ立ち戻る人ではないようだ。行く手に故郷を見出し続ける人ではないのか。」
この文が書かれてから、三十年が経ちましたが、小川国夫の予測通り、司修さんの旅は果てしもなくまだ続いています。
小川国夫の誕生日に司 修さんがやってくるこの滅多にない機会をぜひお楽しみ下さい!
井川 拓