昨日の“shellsong~耳よ、貝のように歌え”にご来場くださった皆様、
誠にありがとうございました!
詳しい報告は、またあらためて、ということにして…。
映画『デルタ 小川国夫原作オムニバス』、いよいよ12/21(火)から
大阪シネ・ヌーヴォで公開になります!
初日のみ夜の上映で、上映後にはスペシャル・トークショーを予定しています。
ゲストは、画家・作家の司修さん!
司さんは、小川国夫さんの著作の装幀、装画をたくさん手がけられ、
生前の小川さんと親交の深かったひとりです。
映画『デルタ』プロデューサーで、これまで小川作品をたびたびとり上げてきた
舞台演出家の仲田恭子が対談相手をつとめます。
また、名古屋シネマテークでは、第24回自主製作映画フェスティバルにて、
「他界」監督の高野貴子が所属する映像制作集団空族のドキュメンタリー『FURUSATO2009』
とセット上映されます!
こちらも請うご期待ください!
詳細、また少しずつご紹介していきますね!
下窪俊哉
月別アーカイブ: 2010年12月
shellsong前夜
12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”がいよいよ明日開催されます。
今日は一日、会場を設営を主催者DOOM!と、ふだん映画館で働く応援隊の支援を受けて行いました。
今回のイベント準備は、イベントタイトルが示すように、「音」にこだわってやってました。言葉や音楽の分子としてある前に、まず物理的な「音」を体感してもらえるよう、劇場に設置されたスピーカーを用いず、自分たちで4台を設置し、映画をかけていきます。
単に音量を大きくすることが目的ではありません。作品と向き合うなかで、作品の可能性を引き出し得るために出来ることをやる、というごく当たり前のことをやるためです。
映画『デルタ』を織りなす三本の作品がどのように受け手のなかに届くのか。それを想像することはやはりなによりも楽しい時間です。
来て頂いた方にとっても、楽しい時間となることを心より願っています。
井川 拓
えんがわおしゃべり相談会
12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”の
スペシャルゲストの倉田めばさんが講師をなさった「えんがわおしゃべり相談会」に参加してきました。
「えんがわおしゃべり相談会」はココルームが企画し、大阪西成にある「カマン!メディアセンター」で約半年で22回のプログラムが組まれています。参加費は無料。様々な分野で活躍する人が講師となって、あるテーマを参加者全員で相談する場です。
僕がついたときはもう倉田めばさんの話は終わっていて残念でしたが、今回のテーマ「わたしにとっての依存」を参加者全員が話し合う場にいられたのは、とても貴重な体験でした。小さな机を囲って、みんながお互いの顔を眺め、膝をつき合わせて話を聴いていると、耳が敏感になっていると感じました。自分だけに向けられたのではないけれど、その場に居合わせたひとりひとりに届けたいと願って語られる言葉は、切実でありながら、どこかおおらかでした。言葉はときに横道にそれ、ときに宙を舞い、ときに途切れましたが、しばらくすると車座のなかにちゃんと戻ってきていました。相談ってこうやってやってたよな…。そう思い出した時、自分の耳が日常のなかでいかに塞がっているかにも気付きました。
帰りに、参加者連れ立て、価格・味ともにグッドな中華料理店でラーメンを食べました。「台湾ラーメン」380円也。
「台湾ラーメンって名古屋発祥らしいよ」
確かに言われてみれば、甘辛いスープが手羽先を思い起こさせもします。
こういう記憶がずっと残るようを祈りながら、スープを平らげました。
“shellsong”まであと二日となりました。今日は、耳そうじを念入りにして眠ることにします。
See you!
井川 拓
『あなのかなたに』
12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”の
スペシャルゲストのひとり、湯浅学さんの小説『あなのかなたに』(扶桑社)を少し紹介させていただきます。
『あなのかなたに』は扶桑社の雑誌「en-taxi」に掲載された原稿を元に、2009年に刊行されました。帯に「80年代を音楽とともに駆け抜けた自伝的音楽小説」とあるように、ある視点から見つめた自身の姿(猫田正夫)と特定の時間(1980年代)とが克明に描かれています。
膨大な量の音楽家とレコードの名前が載っていますが、僕には音楽小説とは思えませんでした。仮に80年代の音楽を全く知らない人が読んでも、全く問題にはならないでしょう。むしろそういった人のほうが、この小説の一見闇鍋的な文体のなかに紡がれる声をしっかりと聴くことができるかもしれません。それは正夫が恋した女の声です。名前も付けられていない「あの女」の声はすべて正夫の回想のなかで、そのほとんどが受話器の向こう側から聴こえる声として、具体的な音楽とともに蘇ってくるのです。
一節、引用させていただきます。
「そうかLPあの女に貸したまんまだ」ほかには猫しかいない部屋で正夫は大きな声でそういった。あんたは聴いたんだからもういいでしょ。このジャケット最高よね。このバンドやっている人大竹シンローっていうんだって。先に聴かせてやったんだから、よかったでしょ、喜びなさいよ。
「あの女」の声はいつも一方的で、身勝手で、ささくれだっている。なのに正夫がいつまでも「あの女」を忘れることが出来ないのはどうしてなのか。それは最後に「あの女」が正夫にいった言葉が優しすぎたのかもしれません。
ひとが持つ「あな」のなかで唯一伸縮も閉じることのできない器官を通ったものは何処へゆくのか、そんなことに思いを馳せさせる一冊です。
井川 拓
『ノリピーよ、ダルクにおいで!』
12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”の
スペシャルゲストの倉田めばさんの活動を少し紹介させて頂きます。
11月27日のブログで、倉田めばさんが「大阪ダルク」代表として、薬物依存者のピア・サポートを行っておられることを書きましたが、「ドラッグ」をタブー視し、忌避する傾向の強い日本では、「ダルク」の認知度はまだまだ低いようにも思えます。
「ダルク」は日本だけでなく、世界中にある施設ですが、一つの共通の理念を実践していく場であると倉田めばさんから教わりました。それは「薬物依存者に言葉を取り戻していく場」であるということです。
その具体的な内容・メソッドについて書くことは僕にはできませんが、薬物依存者に限らず、いま僕らひとりひとりが「言葉を取り戻していく場」をつくっていかなければならないのではないかと考えさせられました。
W・バロウズは「社会の中毒者」もジャンキーであると言いました。寄りかかっているものを見つめ、歩を止め、耳を傾けなければ気付けないこと、それが生きてゆく糧になる時もあるのではないかと思えるのです。
倉田めばさんは、いろんな場所へ出かけられます。薬物依存者が投獄された刑務所、精神病院、それに酔っ払いが集う大阪の路地での「えんがわおしゃべり相談会」……。
「言葉を取り戻していく場」、そこが倉田めばさんのホームグラウンドなのです。
12月5日のイベント”shellsong”もそのような〝場”にしていきます。是非お楽しみに!
(※写真は既に終了したイベントのものです。本記事タイトルは、大阪ダルクでの最近の合言葉らしいです。)
井川 拓